2017年のスポーツ界で見られるグローバルなトレンドとは?
2017年01月31日 コラム チーム/リーグ経営 Written by 新川 諒
2016年はオリンピックイヤーだったこともあり、スポーツ界では多くの変化が生まれた年だった。その中でも、新たなスポーツ界の流れを予感させるものが多く見られた。
目立ったのが中国の本気度だった。ヨーロッパのクラブを買収するなど、サッカー界にチャイナマネーの存在感を幾度となく見せつけた。そしてNBAなどの北米プロスポーツリーグが中国に目を向けてマーケット拡大をもくろむなど、スポーツ界にとっては今後もキープレーヤーとなることは間違いない。
中国の躍動とともに新たなトレンドを予感させる動きがOTTメディアの台頭だ。ディズニーはMLBアドバンスト・メディア(MLBAM)に投資。さらには日本でもDAZNを展開するパフォームグループによるJリーグの放映権契約にも見られるように、スポーツコンテンツの価値が高まっていることが感じ取れた。2016年スポーツ界での大きな動きの中に米メディア企業リバティ・メディアのF1買収、そして米芸能事務所WME-IMGのUFC買収があった。共に破格の額で取引は成立し、スポーツコンテンツの資産価値を物語った動きとなった。
次に迎える2020年東京五輪に向けて、日本のスポーツ界が重要な役割を担っていくのは間違いないが、その中でニールセンスポーツが予測する2017年のスポーツ界でのコマーシャルトレンドに目を向けてみよう。
まずは中国をはじめとする新たなマーケットの出現だ。日本の各プロリーグも東南アジアをはじめ各地での普及活動を行っているが、これは世界各国のチーム、リーグもすでに行っていることで、今後第2・第3のマーケットをどの競技が、そしてチームが獲得していくのかという戦いも熾烈となりそうだ。旧正月を迎えるこの時期、米国プロスポーツリーグが中国のファンを意識したSNSによる発信が非常に目立っている。
そして今後さらに活発化していくことが予想されるのは、コンテンツと連携したパートナーシップだ。スポーツの分野に踏み込み、一緒にアクティベーションを行うことで商品の認知度を高めようと試みる企業も増えていくだろう。
2016年はイギリスの積立投資会社「スタンダードライフ」が自国のスターであるアンディ・マレーを活用したシリーズものを映像化した。マレーが自国を代表する他競技のアスリートと対談をして、それをテニスへの関心が高まるグランドスラム大会が開催される時期にSNSで発信をした。人気の高いマレーとパートナーシップを組むことで、ブランドの認知度を高めるアクティベーションを行った。2017年もアスリートやスポーツ団体とパートナーシップを組み、企業のブランドイメージを高めるさまざまにクリエイティブな発信がトレンドとして続いていきそうだ。
新たなファン層、そして習慣が生まれることが変化のきっかけとなる。今後さらなるトレンドとして、ニールセンスポーツが予測するスポーツとエンターテインメントの融合、OTTメディア、そしてSNS連動が増えることでスポーツの楽しみ方が変わっていくだろう。テクノロジーが可能とするファンと常につながりを持つことができる環境を生かすために、各国のリーグ、そしてチームが最適な形を模索し続けている。
パキスタン・スーパーリーグ(PSL)はパキスタン初のプロスポーツリーグとして2016年に発足された。5チームでスタートしたこのクリケットリーグは、自国ではなく、中立国のアラブ首長連邦国(UAE)で開催されることとなり、運営側としてはいきなり困難が立ちはだかった。そんな中、運営するパキスタンクリケット協会はSNSを活用した情報発信でファンをエンゲージすることに成功し、PSLの公式Facebookページは大会期間中だけでフォロワーが230%増加した。
増え続ける新たなテクノロジーの中にはデータの活用も含まれており、これからはパフォーマンス向上やチーム戦略のためのデータだけではなく、ファンとの関係性を構築していくためのビジネス面での需要も増えていくことだろう。2015年のワールドカップの盛り上がり、そして2016年はオリンピック競技として世界中で認知度を高めたセブンスの影響もあり、ラグビー人気は今までにないぐらいに高まっている。ニールセンスポーツによるさまざまなファン層に関するデータもたたき出されており、今後こういったデータを基にどのような取り組みが行われていくのか注目される。
2017年のスポーツ界のトレンドとしてニールセンスポーツが取り上げた10の項目では多くが昨年から注目されるもので、今年あらためて浸透していくのかが注目されるものが多い。eスポーツもそのうちの一つであり、話題となっているもののどうマネタイズしていけるのかを模索しているスポーツ団体が多く、こちらも新たなトレンドとなれるのか興味深い。日本でもすでに東京ヴェルディがeスポーツ部門を設立し、サッカーゲーム「FIFA」の専属プレーヤーとの契約を行った。
eスポーツをはじめとした新たなコンテンツに対しての投資利益率をどのように捻出できるかが、スポーツ界の永遠の課題とも言っていいだろう。この課題を解き明かす方法を思い付くことができれば、それが新たなトレンドになると、ニールセンスポーツも最後の10項目目として挙げている。さまざまな情報やテクノロジーがあふれる世の中となっているため、その中で利益を生み出すものだけが、トレンドで終わるのではなく、新たなスポーツ業界の一部として生き続けていくのではないだろうか。
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<ニールセンスポーツとは?>
世界最大のリサーチ会社ニールセンが2016年6月21日、スポーツ視聴測定、メディア評価およびマーケットインテリジェンスなどのスポーツマーケティングリサーチ&コンサルティングサービスをワンストップで提供する世界最大企業レピュコムを買収したことにより誕生。
グローバル規模でのスポーツ関連サービスを拡大、成長著しいスポーツ市場におけるアナリティクスやインサイトの提供においてトップの地位を確立する。
スポーツに対するスポンサーシップ投資は現在、世界規模で 600億ドルとますます成長しており、ニールセンスポーツでは、スポンサーシップ効率からファン層データの可能性に至るさまざまなソリューションを、ニールセンの消費者行動およびメディア利用に関する知識と組み合わせられる、という理想的な立場を生かして、事業の商業的な成功の最大化を支援している。
公式サイト:http://nielsensports.com/jp/
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【了】
新川諒●文 text by Ryo Shinkawa
幼少時代を米国西海岸で10年過ごし、日本の中学・高校を経て、大学から単身で渡米。オハイオ州クリーブランド付近にあるBaldwin-Wallace Universityでスポーツマネージメントを専攻。大学在学中からメジャーリーグ球団でのインターンを経験し、その後日本人選手通訳も担当。4球団で合計7年間、メジャーリーグの世界に身を置く。2015年からは拠点を日本に移し、主に海外スポーツ中継に携わるフリーランスの翻訳家、さらにはフリーライターとしても活動中。
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実施場所:大和高田市内の公立中学校実施時期:2024年9月~2025年1月活動内容:休日の部活動を地域クラブ活動化し、学校管理外とした練習及び大会引率等の実施業務 :スケジュール調整、種目指導、活