掴んだ夢の仕事の契機は１つの採用募集記事。その名も「第2の川淵を探せ！」　～Bリーグ・古澤彬弘氏インタビュー～

2017年02月10日 インタビュー チーム/リーグ経営 Written by AZrena

　SJNでは、知られざるスポーツの裏側の情報を提供している「AZrena（アズリーナ）」のご協力を得て、記事提供を頂いております。

　2016年9月に開幕した男子バスケットボールのプロリーグであるB.LEAGUE（Bリーグ）。SNSやテレビの露出で徐々にお茶の間にも浸透しています。事務局の皆さんはBリーグ開幕という日本のバスケットボール界の歴史に新たな1ページを刻む歴史的瞬間に立ち会ったことになります。

　今回はその一人である古澤彬弘さんにお話を伺いました。10代のころからバスケットボール界で働きたいという夢を追い続け、それを実現させた古澤さん。彼の人生を変えたのは、一つの採用広告とのこと。その出会いとは――。

（出典：AZrena『掴んだ夢の仕事の契機は１つの採用募集記事。その名も「第2の川淵を探せ！」」2017年2月7日）

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「自分がおじいちゃんになったら、“自分年表”を見返すと思うんですよ。その時に子どもや孫に胸を張って語れることをしたんじゃない、って」
（公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 法人営業部　古澤彬弘）

■通勤電車の中でたまたま目にした採用募集記事

　私は昔からバスケットボールに関わる仕事をしたいと思っており、高校時代は体育教師に憧れていました。バスケットボール部の顧問になって子どもにバスケを教えて…という目標を掲げていました。子どもから大人までみんながバスケを好きになってくれるような仕事ができたら、という思いがありました。しかしながら希望する大学に入学できず、別の道を探すことになり、広告業界に就職をしました。バスケの仕事に携われるかも！と思ったからです。そんな中、とあるチームのお仕事をさせていただく機会がありました。しかし世の中にバスケを広める、というプロモーション的な仕事ではなく、スポンサー営業をしてくれないか、という話がどちらかというと多かったですね。

　ここからBリーグに務めるまでの経緯になりますが、去年の夏に結婚し、同時にマンションを買ったんです。「あとはローンを返していくだけだ！」と、やりきった感がありましたね。その反面、何か足りないものを感じたのも事実です。結婚をして、マンションを買い、そして電車では日経新聞を読みながら通勤するというのがサラリーマンのスタンダードだと思っていて（笑）。そのような日常の中で、いつものように通勤途中に日経新聞を読んでいたら、“第2の川淵を探せ”というBリーグの採用募集記事が目に入ってきました。これを見た瞬間、全身に電気が走り、翌日には応募をしていました。

　自分の中でずっとくすぶっていた気持ちがあり…。そんな中、募集記事に出会ってしまった。その時、僕は結婚して3カ月。バスケの、それも新リーグの立ち上げ。海のものとも山のものとも分からない会社に応募をしようとしているわけです。まず嫁を説得し、その後、嫁の両親を説得。最後は自分の両親を説得する…、説得三昧の毎日でした。熱意と情熱で必死に語り、なんとか納得してもらいました。入社が決まり、当時は関西に住んでいましたので、買ったばかりの家を売り、そこから関東へ。これからという時にお給料の安定している大手広告代理店を退職。「バスケが俺を求めている！」と飛び出してきました。

■求められたのは川淵三郎氏と同じ“挫折体験”

　募集期間は１カ月くらいで、後から聞くと約1200人の応募があったみたいです。Bリーグは大企業でもないし、小さい会社でゼロからいろいろと立ち上げていかなければいけない。そういう意味で、起業家マインドを持った人が欲しかったと。（Bリーグ初代チェアマンの）川淵（三郎）さんは昔サラリーマン生活を送っていて、51歳の時に左遷されているんですよね、古河電工で。それがJリーグを立ち上げる原動力になったそうです。挫折、失敗をものともせず、夢に向かって立ち向かうパワーがある人が欲しい、ということで、応募の際には、挫折経験と、それがどう今の行動に結び付いているか、というテーマで小論文を書き、履歴書と職務経歴書と一緒に提出しました。

　自分の中では体育教師になれなかったというのが人生の分岐点かなと思ったので、それを挫折として小論文を書きましたね。『希望の大学に行かせてやるからな』という言葉に甘えて勉強をしなかった。洛南、東山高校など強豪校がひしめく京都府でチームをベスト8に導いたという自負もあり、行けると思った大学から不合格通知が来た時にはがくぜんとしました。そしてその時にはセンター試験も終わっていました。「はしご」を外された感じです。その後もチャンスがあればバスケの仕事がしたいと願い続けてきた結果、今の仕事に巡り合えたのは不思議なものだなとも思います。

　面接は3回ありました。感触はなかったですね。ただ2回ぐらい面接をパスした時に「これはひょっとすると…」と思いましたが、後から応募人数を聞いてびっくり。結果的には運良く通った、ということではないでしょうか。

　今は法人営業部で働いています。扱っているのは放映権です。ただ、映像制作も法人営業部の管轄で、比重でいくと8割がこちらになります。

　どういう業務になるかというと、例えばスポーツニュースはみんな当たり前のように見るじゃないですか。その中に今まではバスケットボールはありませんでした。それは試合が終わってすぐに放送局へ提供するという仕組みができていなかったからです。僕はそのスキームづくり、それを管理する業務をメインに担当しています。毎試合、各会場では試合中継、そしてその映像を放送局に提供するため3台の中継カメラと実況解説を一つのクルーとして派遣します。その準備として実況と解説者は誰をアサインするのか。そして実況と解説者が使う言葉はどうするのか。専門用語を使う、使わない、など含め、ゼロベースで考えました。

　例えばですけど、子どもがBリーグの試合を観戦し、田臥（勇太）選手の活躍するシーンを見てファンになったとします。その後、日々のニュースで野球、サッカーに続いてバスケのコーナーがあったら、よりバスケに触れるきっかけになると信じています。将来的にそれを見た子どもたちが日本代表になったらと思うと…、もちろん簡単ではないことは分かっていますが。その懸け橋の一端を自分が担っているかも、と思いながら日々、熱く、熱く仕事をしています。そこがモチベーションとなっています。

　入社した時はスポンサー営業をすると思っていましたので、映像製作に携わるようになり、正直なところギャップを感じましたが、そのギャップを今は楽しんでいます。結果として前職の現場とつながっていますし、感謝しています。

■多くの人に会うことが、道を開く

　Bリーグ事務局は今、30人くらいなんです。日本に1億何千万人いる中でBリーグの立ち上げに携わった人間は30人。昨年の開幕の9月はみんなフラフラでした（笑）。今までの人生で一番働きましたね。そういう場に立ち会えたことを誇りに思います。自分がおじいちゃんになったら、“自分年表”を見返すと思うんですよ。その時に子どもや孫に胸を張って語れることをしたんじゃない、って。それこそ川淵さんと仕事をするなんて願ってもなかなかできることではないですし、母校のサッカー部出身の友達や先輩からすると憧れの存在でもあるので。そういう方と「第2の川淵」の採用企画で入社し、一緒に仕事ができるということはうれしいですね。

　組織も若いので大変なこともあります。ただ、それでもやっていけるのは「人」ですね。事務局メンバーはみんな真っすぐ。誰も弱音を吐かない。全員が頑張っているから、誰か困っていたら助け合おうとする風土があります。チームスポーツでは当たり前ですが、それを企業風土としてやっているので、風通しもいいし、働く環境としては楽しいです！

　自分は今まで、「いろんな人に会う」ということを心掛けていました。それは今でも揺るいでいません。高校時代のバスケ部の顧問が異動になり、指導者不在の時期には臨時コーチとして母校に行き生徒と仲良くなったり、アルバイトもいろいろやったりしました。トークが苦手なのもあって自分自身を改善したいと思い、スポーツバーでバーテンもやりました。１人で海外にも。１日24時間の中で時間を無駄にせず、どれだけ多くの人に会って、いろいろな話をできるか。つながりをたくさんつくることで、道が拓けると思うんです。だから、この業界を目指す人には、その点を意識してほしいですね。

　実際に今も、多種多様な業界に友人がいて、困った時に電話一本とかSNSのメッセンジャー一つでいろいろと助けてもらえる。そういう意味では、こういった土壌を大学時代につくっておいて良かったなと感じています。

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<profile>
古澤彬弘（ふるさわ・あきひろ）
公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 法人営業部
1983年生まれ。京都府立久御山高校から大阪学院大学へ進学し、大手広告代理店を経て、現在のBリーグへ。法人営業部所属。テレビ・ラジオ・パブリックビューイング等の放送権利担当、放送局やメディア等に提供するリーグ映像の制作業務に従事。通称「ガッツ」。
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【了】

記事提供：AZrena
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