フルマラソンをスクロールで体験? 42.2kmのデジタルコンテンツでファンにアプローチ!
2017年09月11日 コラム スポンサーシップ/パートナーシップ Written by SPODIGI
SJNでは、スポーツにスポンサードする企業を、チーム、コンペティションごとにまとめたウェブサイト「スポーツ×スポンサー辞典」のご協力を得て、記事提供を頂いております。
今回は、昨年にカナダで行われた「モントリオールマラソン」のスポンサーであるカナダの大手スポーツ用品店「Sports Experts」によるスポンサーシップのアクティベーション事例をご紹介します。
1967年から通算14回、スポンサーを務める Sports Experts は、その歴史の振り返りも兼ねて、ランナーの辛さを人々に体験させる秀逸なデジタルコンテンツを制作しました。
(出典:スポーツ×スポンサー辞典『フルマラソンをスクロールで体験?42.2kmのデジタルコンテンツでファンにアプローチ!』2017年8月24日)
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■42.2キロの「スクロールマラソン」
Sports Expertsが制作したのは、長さ42.2キロのウェブサイト。42.195キロのフルマラソンとほぼ同じ距離のウェブサイトです。
このスクロールマラソンの内容がまとめられた動画があるのでご覧ください。
42.2キロスクロールができるという秀逸なウェブサイトを制作したSports Experts。
スクロールマラソンは、マラソンファンにランナーが味わっている苦しさを実際に体感してもらいたいという思いから生まれました。
ウェブサイトの中には、本物のモントリオールマラソンのコース地図、走行距離、走行時間が表示されています。また、走行途中でユーモアのある応援メッセージが出てくるなど、参加者が完走できるような工夫が施されています。
完走者には、時計やシューズ、サングラスなどのSports Expertsのスポーツ用品がプレゼントされたとのことです。
ウェブメディアやテレビなどさまざまなメディアでも取り上げられ、開始後6日間で1万5000人が完走するなど非常に話題となりました。完走できずに終わった人も含めると、多くの人々にリーチできたのではないでしょうか。
今回は、Sports Expertsが行なったスクロールマラソンの優れた点を考察します。
1. 広告スペースにこだわらない手法
スクロールマラソンの優れた点は、ロゴを広告スペースに掲出する従来通りの広告手法にとらわれず、Sports Expertsの企業名を露出させることに成功している点です。
世界中の広告クリエイティブがまとめられている「Behance」に掲載されているスクロースマラソンのポートフォリオには以下の記述があります。
Sports Experts wanted to highlight its 14th sponsorship of the Monteal Marathon in a whole new way. While other retailers fight for ad space at the finish line, we decided to go rogue and rethink the approach. That’s why we created the Scrolling Marathon.
(意訳:Sports Expertsは、14回目のモントリオールマラソンへのスポンサーシップを、新たな方法でハイライトしたいと思いました。他の小売店がゴールラインの広告スペースの取り合いに必死になる中、われわれは独自の道でアプローチの方法を改めて考えようと決めました。だからスクロールマラソンが生まれたのです)
※引用:https://www.behance.net/gallery/45673727/Sports-Experts-The-Scrolling-Marathon
このメッセージから、Sports Expertsがロゴ掲出を目的とした広告スペースの確保を重視せず、別の方法でSports Expertsがモントリオールマラソンのスポンサーをしていることをアピールしたいという意図が伝わってきます。
そうした意味で、マラソンと同じ距離のウェブサイトを制作するというアイディアは、非常にクリエイティブでキャッチーです。短期間で多くの参加者を集めたこと、多くのメディアで紹介されたことからも、アピールに成功したといえるでしょう。
2. ランナーの辛さを体験できる参加型のコンテンツ
もう一つの優れた点は、スクロールマラソンがマラソンファン参加型のインタラクティブなコンテンツであるという点です。
Sports Expertsとしては、今回で14回目となるモントリオールマラソンへのスポンサーシップをアピールしたいという思いがあります。そんな思いから制作したスクロールマラソンは、マラソンファン自身がランナーの辛さを「体験」できるコンテンツです。
もともとSports Expertsを知らなかったマラソンファンは、スクロールマラソンに参加することで「制作したのがSports Expertsであること」、「Sports Expertsがモントリオールマラソンを長年スポンサーしていること」を認知します。つまり、スクロールマラソン自体がブランド認知を図るプロモーションになっており、将来的な顧客獲得につながるものとなっています。
また、既存の顧客にとってもスクロールマラソンはクリエイティブなアイディアですし、参加していて楽しいコンテンツです。そうした楽しい体験をしてもらうことで、今まで以上にファンとブランドのつながり、つまりはエンゲージメントを高めることができます。
ユニークなデジタルコンテンツで新規層を開拓するとともに、既存顧客とのエンゲージメントを高めブランドイメージの向上を図る、非常に優れたスポンサーシップのアクティベーションです。
■アクティベーションにおける「デジタル」
今回ご紹介したスクロールマラソンのように、「デジタル」をアクティベーションに組み込む事例が増えてきています。
モバイルが浸透したことで、デジタルを通してファンと常にコミュニケーションを図りエンゲージメントを高めていくことが求められています。スポンサーシップのアクティベーションにおいても、生活者やファンに効果的にアプローチをするためにデジタルを活用することで、その幅を大きく広げることができます。
企業(ブランド)と生活者やファンをつなぐ懸け橋として「デジタル」は今後も重要な役割を担っていくでしょう。デジタルを巧みに活用した事例が今後も生まれていくことに期待したいと思います。
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【了】
記事提供:スポーツ×スポンサー辞典
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