マイクロホンの開発を進めるF1 テレビ中継の「音声」改革に挑む
2017年10月02日 コラム メディア/放映権 Written by 川内 イオ
テレビの視聴者をより画面に惹きつけるために、F1がユニークな取り組みをしている。マイクロホンの開発だ。
なぜ、F1がマイクロホンを?
F1を統括するFIA(国際自動車連盟)は、2000年から全チームの使用エンジンをV型10気筒に統一した。2006年にはそれが2.4リッターV8に、2016には1.6リッターのV型6気筒ターボに変更された。これは、環境汚染、地球温暖化などの問題に対応するための措置で、詳細は省くがシンプルに言い表せば燃費が良く、環境に優しいエンジンが導入される流れになっている。
そして、昨年から使用を義務付けられている1.6リッターのV型6気筒ターボエンジンが、F1関係者の懸念材料になっている。F1をテレビで観たことがある人なら、迫力のある空気をつんざくような独特の排気音が印象に残っている人もいるだろう。しかし、最新のエンジンでは排気音が以前よりも静かに、穏やかになってしまった。関係者は、F1ならではの排気音が抑えられることで、テレビ観戦時の臨場感が損なわれてしまうことを恐れているのだ。
そこで、F1カーの排気口にマイクロホンを装着し、増幅してテレビの音声に流すという計画を立てた。ロイター通信によると、この計画は現在進行中で、セラミック製のマイクロホンはドイツの企業が開発にあたっている。計画には、アメリカのスポーツチャンネル、FOXスポーツを立ち上げ、数々の革新的な取り組みで一大スポーツチャンネルに成長させた敏腕プロデューサー、デイヴィッド・ヒルも参加しているという。
F1は今年1月、アメリカのメディア関連企業リバティ・メディアに買収された。リバティ・メディアは、これまでにないカメラアングルなどで支持を広げており、このマイクロホンの開発も支持していると報じられている。
現場の「音声」に着目したスポーツ中継の改革。その行方に注目が集まる。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。
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