元アスリートが語るスポーツの仕事 「やる」から「つくる」へ-Vol.12-元バレーボール選手 迫田さおりさん
2018年08月28日 インタビュー アスリートマネジメント/セカンドキャリア Written by Sports Japan GATHER
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2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツ、そしてアスリートに注目が集まる今、企業とアスリートの関係にも変化が生まれています。双方にとってメリットのある関係を築くために、何が必要なのでしょうか?
特集『元アスリートが語るスポーツの仕事 「やる」から「つくる」へ』では、元アスリートの方々にセカンドキャリアについて話を聞いています。
今回は、バレーボール選手を引退後、バレーボール教室・解説、イベント・テレビ出演をしている迫田さおりさんの登場です。
(出典:Sports Japan GATHER『元アスリートが語るスポーツの仕事 「やる」から「つくる」へ-Vol.12-元バレーボール選手 迫田さおりさん』2018年5月24日)
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「バレーボールと仕事は一緒。私を成長させてくれる場所」
(迫田さおり(さこだ・さおり)さん/30歳)
■引退後はバレーの仕事をしないはずだった
高校卒業後、バレーボールV・プレミアリーグの東レアローズに入団。2010年には全日本のメンバーに初選出され、初出場となった2012年ロンドン五輪では、チームを28年ぶりの銅メダルに導く活躍を見せた迫田さおりさん。昨年5月に、現役生活にピリオドを打った。
「実は、ロンドン五輪が終わった後から“引退”は常に考えていました。もう悔いはないって思いながらも、私を必要だと言ってくれる人たちがいて、それが本当にありがたく。また、両親を喜ばせたいっていう思いもあり、続けさせてもらっていました。
その後、2016年リオデジャネイロ五輪にも出場し、11年間という選手生活を本当にやり切らせてもらったので、引退したことに悔いはありません。お世話になった東レアローズのスタッフの皆さんに“本当にお疲れさまでした”と言ってもらえ、自分の中では最高の終わり方ができました」
引退から約1年、現在は小学生を対象にしたバレーボール教室や試合の解説、イベント・テレビに出演するなど、幅広く活動。しかし、自身の中で今の活動は“予想外”だったという。
「現役中から考えていたんですが、やめたらバレーから離れると思っていたんです。一時的に距離を置くということではなく、きっぱりと関わらないと考えていました。それには理由があって、今仕事をしているような表舞台に出て“何かをする”ということが苦手だったので、向いていないと感じていました。
現役中はコートで表現すればよかったので、基本的にしゃべらなかったんです。自分のこともあまり話すタイプではなかったですし、“話す”ってなったらチームメイトだけでした。ただやめてからありがたいことに、イベントや解説などの仕事を頂き、いろいろな方と話すようになったんです。でも、“私こんなに自分のこと話す人だっけ?”と、現役の時と全く違う自分がいて、本当の私って何なんだろうって……すごく悩んだ時期もありました。
でも先輩方から“バレーを続けていろんな経験をさせてもらったんだから、それをしっかり伝えることも役目だよ”と言ってもらい、私で何か力になれることがあるなら、がんばらないといけないって、思えるようになったんです」
■自分が進むべき道を探している
現役の時には、聞かれる・教わる側だった迫田さん。わずか1年で、全く逆の聞く・教えるという立場になり、ギャップを感じつつも自分にどんなことが向いているのか。その答えを探している。
「解説やイベント出演など、同じ仕事をされている先輩方に“何でやっているんですか?”、“どういう思いでやっているんですか?”と自分に無い感覚を聞いて、参考にさせていただいています。あと、人の想いや考え方を聞くのは元から好きなんです。『インタビュー』ってなると、まだ少し緊張しちゃって、形式ばった受け答えになってしまうんですが、その人が“どのような気持ちで競技を続けているのか?”“どうしてこのスポーツを始めたのか?”など、興味はすごくあります。
だから心理学はすごい気になるんです。人の考え方とかを自分が吸収できて、その考え方ができたら、もっと面白いかもしれないとか。それを周りの人にも教えていけたら、その人たちが幸せになるかもって。いろいろな人の話を聞いて、それを教えていけることができればラッキーかなって漠然と考えています。
正直、やりたいことが明確で、進みたい道をしっかりつくって、一生懸命に走れている元アスリートの方を見ているとうらやましいです。私は“これがしたい”という強いものがないので。だから、仕事の中で、自分がやりたくて興味を持てる“何か”を見つけたいと思っているんです。今はいろいろ経験させてもらって、本当に感謝しています」
今年3月には、地元である鹿児島で行われたマラソン大会のアンバサダー&ゲストランナーとして参加。いつもテレビで見ていたマラソンのイメージは“一人で走る”だったが、自身が初めてマラソンを走って感じたことは“人と励まし合いながらゴールを目指せる”というものに変わった。迫田さんは、見て終わりではなく『自身で経験して感じたことを率直に伝えていきたい』と付け加えた。
そして、名刺の渡し方や文章の書き方など、社会人としてきちんと仕事ができるように、少しずつビジネススキルの習得にも取り組んでいる。最後に、迫田さんにとって『仕事』とはどういうものなのかを聞いた。
「バレーボールは、競技・私生活と全ての面において、私を成長させてくれたものでした。そして、仕事をしている中でもたくさんの方に会い、私になかったものを気付かせてもらい、それを吸収し、成長しているって感じられるんです。だから、仕事もバレーと一緒で“私を成長させてくれる場所”って、最近思えるんです」
バレーボール選手を卒業した迫田さん。仕事をしていく中で、どのように成長していくのか。今後のキャリアからも目が離せない。
(※データは2018年5月24日時点)
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[PROFILE]
迫田さおり(さこだ・さおり)
1987年生まれ、鹿児島県出身。鹿児島西高校卒業後、V・プレミアリーグの東レアローズに入団。2010年全日本女子のメンバーに初選出。2012年に、ロンドン五輪で銅メダルを獲得。2016年リオデジャネイロオリンピックに出場し、ベスト8に進出。V・プレミアリーグでは、ベスト6を2回、得点王1回、輝かしい記録を残し、2017年5月に引退。
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※関連記事
●元アスリートが語るスポーツの仕事 「やる」から「つくる」へ-Vol.11-元野球選手 奥村武博さん
●元アスリートが語るスポーツの仕事 「やる」から「つくる」へ-Vol.4-元女子サッカー選手 小田加奈子さん
【了】
取材・文=太田弘樹
記事提供:Sport Japan GATHER
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