元アスリートが語る スポーツの仕事「やる」から「つくる」へ -Vol.13- 元サッカー選手 菊池康平さん~前編~
2018年10月24日 インタビュー アスリートマネジメント/セカンドキャリア Written by Sports Japan GATHER
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2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツ、そしてアスリートに注目が集まる今、企業とアスリートの関係にも変化が生まれています。双方にとってメリットのある関係を築くために、何が必要なのでしょうか?
特集『元アスリートが語るスポーツの仕事 「やる」から「つくる」へ』では、元アスリートの方々にセカンドキャリアについて話を聞いています。
今回は、サッカー選手を引退後、アスリート就労支援事業、講演、執筆の仕事をしている菊池康平さんの登場です。
(出典:Sports Japan GATHER『元アスリートが語る スポーツの仕事「やる」から「つくる」へ -Vol.13- 元サッカー選手 菊池康平さん~前編~』2018年9月13日)
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「“できない理由”ではなく“できる理由”を探して行動に移す」
菊池康平(きくち・こうへい)さん/36歳
■人生のモットーとなった中学時代の“成功体験”
異色中の異色ともいうべきキャリアの持ち主がいる。その人物は、元サッカー選手の菊池康平さん。『自称日本一海外プロリーグで挫折を味わった男』という肩書を持つ彼は、一体どんな人生を歩んできたのだろうか。
幼稚園のころに友達が着ていたユニフォームに憧れ「サッカー選手になりたい!」と思ったきっかけから、サッカー一色の人生が始まった。小学5年生の時にはJリーグ開幕と同時に、日本では空前の“サッカーブーム”が巻き起こった。もちろん、菊池さんの将来の夢は“Jリーガー”。
ポジションはフォワード。憧れは、1998年FIFAワールドカップ・フランス大会のアジア地区予選で初の切符獲得につながる決勝ゴールを挙げた“野人”こと、岡野雅行さんだった。
「技術はなかったけれど、足は速かったので、とにかくゴール目がけて突っ込む。それだけでした(笑)」
そんな菊池さんも、実は一度だけ別の競技に行きかけたことがあった。中学2年の時、一時、サッカー部を辞めて陸上部へ。視力が悪かった菊池さんは、夕暮れになるとボールが見えにくくなっていたことをストレスに感じていた。そこで、唯一自信があったという足の速さを生かそうと、短距離選手として陸上に転向。しかし、長続きはしなかった。
「100分の1秒を争う短距離走もスタート時に独特の緊張感があって楽しかったのですが、やっぱりボールを使ったサッカーの方が面白いなと。それで、半年くらいでサッカーに戻ったんです」
そのころ、学校に行く理由が見いだせずに不登校になっていた菊池さん。自宅にいる間、やることはなかったが、考える時間はたっぷりあった。そこで“自分が本当にやりたいこと”を模索した結果、行き着いた先は、やはり“好きなサッカーでプロになりたい”という思いだった。
自らの目標を再確認した菊池さんは、再び学校へ。しかし、学校のサッカー部には戻らず通い始めたのは、自らが探し当てた地元のクラブチーム。
「偶然、新聞の折り込みチラシの中にクラブチームの募集があるのを見つけたんです。元Jリーガーが指導しているというところに引かれて、すぐに自分で電話をしました。
対象からは外れていましたが、それでも『とにかく電話してみよう』と思ったんです。そしたら『そんなにやりたいなら来なさい』と練習参加が認められました。その時に“最初から無理だと諦めずに、まずは行動に移してみることが大事”なんだなと感じました」
その出来事が大きな“成功体験”となり“人生訓”となっていった。
■国内がダメなら海外への“発想力”
プロという目標をかなえるため、高校からはJリーグのユースチームに所属。しかし、それも一筋縄ではいかなかった。6、7チームのトライアルを受け、ようやく合格。
「当時はインターネットが普及していなかった時代。サッカー雑誌など、自分で募集を見つけては、片っ端から電話をかけたり、手紙を送ってテストを受けていました。その経験が、自分にとっては大きな自信となった気がします」
しかし、それも順風満帆とはいかず、高校3年生からは進学のことも考え、高校のサッカー部に所属。学校の仲間と全国大会を目指し、充実した時間をおくれたが、都大会へも進めず。高卒でのJリーガーは、遠い「夢」となっていた。
だが、そこで“辞める”という選択肢はなかった。
「へただったし、ユースチームでもレギュラーにはなれないけれど、それでも少しずつうまくなってきているということは、感じていました」
自分自身に伸びしろを感じていた菊池さんは、サッカーから離れることは考えられず、名門である明治大学のサッカー部の門戸を高校3年生の冬にたたいた。ところが、あまりのレベルの差にそこに自らの居場所を求めることを断念した。
普通ならば、そこでやめてもおかしくはない状況だが、その考えはみじんもなく『海外』への挑戦を決意。果たして、なぜそんな発想ができたのか。
「高校3年生の時に、地元でシンガポールのプロリーグのテストが行われたことがあって、参加したんです。テストには落ちましたが、その時に『あ、シンガポールにもサッカーリーグがあるんだな』と。
それまでは、セリエAとかブンデスリーガというヨーロッパの有名なリーグは知っていましたが、アジアにもプロリーグがあるのを初めて知ったんです。それを思い出して、テストを受けてみようと思いました」
普段は、授業の合間にトレーニングとアルバイトをして準備し、夏休みや冬休みなどを利用して海外に行く生活を繰り返した。菊池さんは4年間でシンガポール、香港、タイ、マレーシア、オーストラリアなど、アジア・オセアニアの各国を回り、プロ契約の道を模索。
「今ならたくさんの日本人がいろんな国のリーグでプレーしていますが、当時は情報もほとんどなかったので、日本人を見かけるなんてことはまれでした。だから、すべて自分で現地に行って、情報収集からチームとのやりとりからすべてやらなければいけなかった。時には、現地の通りすがりの人に聞いたりすることもありました。
特に英語ができるわけでもないので、大変ではありましたが、分かる英単語を駆使し、なんとかコミュニケーションを取りました。現地に行かないと分からなかった情報を本当にたくさん得られたし、また人脈も一気に広がりました」
もう少しでプロになれるということも何度かあった。最大のチャンスは、大学3年生の秋。
「実は、内定式の前日までタイにいました。チームとしては『このまま残ってくれれば、プロ契約するから』と言ってくれたのですが、海外での口約束は当てになりませんからね。だから『今すぐに契約してくれるなら残る』と言ったんです。でも、それはしてもらえなかったので、帰国しました」
(後編へ続く)
※データは2018年9月13日時点
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[PROFILE]
菊池康平(きくち・こうへい)
1982年生まれ、兵庫県出身。大学時にバイトを繰り返し貯金ができたら 海外のサッカーチームのトライアウトに出かける日々を過ごす。複数の国へ道場破りのような形で挑戦するもプロ契約できず、大学卒業後にパソナに就職。海外でプロサッカー選手になる夢を諦めきれず、入社し丸3年がたった2008年6月に会社を1年間休職し海外へ。同年8月にボリビアの1部リーグに属するCLUB DEPORTIVO UNIVERSIDADとプロ契約。2009年復職。その後も夏季休暇や年末の休暇を利用し、海外のチームへ。16カ国で挑戦した経験を生かすため、パソナにてアスリートのキャリア支援を行うほか、講演やライター活動に従事している。
HP:元ボリビアリーガー&道場破り男菊池康平 公式サイト!
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【了】
取材・文=斎藤寿子
記事提供:Sport Japan GATHER
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