ポッドキャスト「The Tennis Podcast」が毎年恒例のクラウドファンディングで約2000万円を調達
2020年12月24日 コラム メディア/放映権 Written by 川内 イオ
自分が好きなスポーツ番組を、視聴者が直接支える時代が来ているようだ。
イギリスのBBCラジオ「5Live」でテニスのコメンテーターを務めるデビッド・ロウと、テレビやラジオでスポーツレポーター、コメンテーターを務めるキャサリン・ウィタカーが、2012年から二人でポッドキャスト「The Tennis Podcast」を始めた。
スポンサーの確保に苦労していた二人は、このポッドキャストを継続するだけでなく、内容を充実させるために、2016年より毎年12月、翌年の配信に備えてクラウドファンディングを行ってきた。最初の年の目標金額は1万ポンド(現在のレートで約139万円)で、最終的に1万6141ポンド(約223万8000円)を集めた。二人はこの資金を使って編集者を雇い、2017年のシーズン、年間106回のポッドキャストを配信した。
それから「The Tennis Podcast」の支持者は増え続けており、2018年12月にスタートしたクラウドファンディングでは、目標金額5万ポンド(約693万円)のところ、5万3930ポンド(約748万円)を集めて、フルタイムのスタッフを雇用し、2019年のシーズン、130回のポッドキャストを配信した。
2019年12月に始めたクラウドファンディングではさらに調達金額が増え、目標金額8万ポンド(約1110万円)に対して、8万5506ポンド(約1187万円)を達成。2020年は新型コロナウイルスの影響で3月から7月まで主要な大会が中止されたにもかかわらず、過去の大会の回想や選手のインタビューなどを行い、140回のポッドキャストを配信した。
そして2020年12月1日から現在進行形で行われているクラウドファンディングでは、社会全体がコロナで打撃を受けているなか、なんとか番組を継続したいということで、前年と同じ8万ポンド(約1110万円)を目標金額に設定したところ、わずか2日間で達成。12月22日の時点で、1231人から1416万3412ポンド(約1970万円)が寄せられている。
Webメディア『SportsPro』によると、テニスのシーズン中、平均で約2万5000人、多い時には約6万8000人が「The Tennis Podcast」を視聴している。それは決して大きな数字ではないが、熱心なファンを獲得することで、フルタイムのスタッフを雇い、スポンサーの意向に惑わされることなく自分たちがつくりたい番組を配信することができることを「The Tennis Podcast」は証明しているのだ。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。新著『1キロ100万円の塩をつくる: 常識を超えて「おいしい」を生み出す10人』(ポプラ新書)が発売中。https://amzn.to/2ZaM9Mz
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