「ああ、これは厄介だ」。FIFAの急な方針転換でバドワイザーがスポンサー料の返還を要求か
2022年11月23日 コラム スポンサーシップ/パートナーシップ Written by 川内 イオ
11月20日に開幕したサッカーのFIFAワールドカップ・カタール大会(以下、カタールW杯と記載)。公式パートナーとしてFIFAパートナー7社、ワールドカップ・スポンサー7社、地域サポーター5社が名を連ね、2018年のロシア大会後からの4年間でFIFA(国際サッカー連盟)がスポンサーから得た収入は75億ドルに達した。これは、ロシア大会で記録した最高額を10億ドル以上、上回る。
スポンサーシップパッケージを全て完売したFIFAはホクホク顔だろうが、万事順調というわけではない。アルコールの販売に厳しい規制をかけている保守的なイスラム教国であるカタールは当初、スタジアムでのアルコール提供を認めると約束していた。公式ファンガイドには、キックオフの3時間前から試合終了のホイッスルの1時間後まで、スタジアムやその周辺でバドワイザーのアルコール飲料を飲むことができると記載されている。
ところがFIFAは開幕2日前の18日になって、方針を撤回。アルコール飲料を提供するのは、スタジアムのホスピタリティスイートのチケットを持っているごく一部の富裕層と、スタジアムから遠く離れたファンゾーンのみとなった。この急な決定は、カタール王室の圧力によってもたらされたと一部メディアが報じている。このアルコール禁止令に対し、バドワイザーの公式Twitterアカウントは当初、「Well, this is awkward(ああ、これは厄介だ)」というツイートし、その後削除した。
イギリスの高級日刊紙『ガーディアン』によると、バドワイザーを所有し、カタールW杯で7500万ドルのスポンサー契約を結んでいるアンハイザー・ブッシュ・インベブ社が、FIFAに対し、同大会の公式ビールサプライヤーとして支払った報酬から4000万ポンド(4720万ドル)を差し引くよう要求するようだ。また、同紙は、多くのスポンサーが「いろいろな意味でFIFAに失望させられた」と感じており、「誰もが何らかの形で不満を持っている」と報じている。
異例の開幕を迎えたカタールW杯。12月18 日の決勝戦までなにごともなく進行するのか注目だ。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、新卒で広告代理店に就職するも9カ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。新著『稀食満面 そこにしかない「食の可能性」を巡る旅』が11月28日に発売。https://amzn.to/3UBIJxl
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