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アスリートの再教育の必要性~MANAGEMENT-K CAREERの挑戦~

2025年03月04日 インタビュー Written by

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アスリートのセカンドキャリア問題というのは良く聞く言葉ではあるが、実際には何が問題なのだろうか?この問題に「職の紹介」というアプローチでない形でチャレンジしはじめたMANAGEMENT-K CAREERの永松謙使さんにお話をお伺いした。

河島:

簡単に永松さんのキャリア、自己紹介をお願いいたします。

永松:

MANAGEMENT-Kの永松と申します。慶應義塾大学剣道部出身で、2010年に新卒で野村證券に入社し、営業職を6年ほどやっておりました。その後に起業しまして、剣道に関するサービスをローンチいたしました。そして、2023年にスポーツビジネス事業である「MANAGEMENT-K」を設立いたしました。

河島:

なぜ独立して、剣道関連事業を作ろうと思ったのですか?

永松:

野村證券時代は、同期をはじめ周りに優秀な人が多く、「このまま戦ってもなかなか敵わないな」と思っていました。そんな時に、偶然営業で剣道具店に行くことがあり、多くの剣道具店や道場などが廃業や危機的状況にあるということを知りました。そこで、色々と調べてみると、剣道の競技人口は他競技よりもかなり多く(=柔道の約十倍)、それなりの市場があるにも関わらず、業界が衰退の危機にあるということが分かりました。このねじれのような状況を何とかしたいと思い、2016年に「剣道具専門ECサイト」と「外国人向け剣道体験ツアー」という2つのサービスを作りました。当該サービスは、今でも事業として運営しております。

河島:

その後MANAGEMENT-Kを設立するわけですが、その経緯を教えて下さい。

永松:

ご縁があり、大手通信会社において「スポーツくじ」のサービス立ち上げプロジェクトに参画いたしました。その際に、柏崎(MANAGEMENT-K代表)と出会い、企業側から見たスポーツのお金の流れを肌で感じることができました。それを踏まえて、剣道でやってきた知見も含めると、ビジネスとして横展開が出来るのではと思い、スポーツビジネスに参入いたしました。具体的には、「企業へのスポンサーシップのセールス」と「アスリート向けセカンドキャリア教育プログラム(=MANAGEMENT-K CAREER)」を提供しております。

河島:

今回セカンドキャリアのサービスを新たに展開されるというところで、そこに至った背景について教えてください。

永松:

先ほどお話したような活動の中で、企業の方とお会いすることが多く、社内のアスリート社員の方のお話や、アスリートへのスポンサーシップについてのお話を伺う機会が多くありました。その中で、社内でアスリート社員の方の処遇に苦悩されていたり、コミュニケーションがうまく取れていなかったりと、アスリートを事業に活用したり、人材として活用したりすることの難しさに直面いたしました。

一方で、アスリートの方にお話を伺うと、何か「人材として劣っている」ということは当然一切なく、通常私たちが就職活動や社内外との関わりで学ぶ一般的な知識を、単純に知る機会がなかっただけということがわかりました。むしろそれ以外の部分では、非常にバイタリティある方が多く、人材として非常に競争力があるなという印象を受けました。

つまり、「必要な知識を必要なだけ」提供することができれば、アスリートの方々の活躍の場が広がるのではと考え、「アスリート向けセカンドキャリア教育プログラム」のサービスを作りました。

河島:

なるほど。現役時代含めて経験や教育を受ける機会がなかったというところへの問題意識ですね。

永松:

はい、それに加えて私自身の体験も元になっています。私が独立して起業をした時、色々な方にお話を伺った結果、逆に何をすれば良いかわからなくなってきてしまったということがありました。知識がない状態で、色々な方の成功体験を聞いても、全く消化できないということがわかりました。実際は、抽象化すると、皆同じようなことをおっしゃっていたのですが、当時の私には全くわかりませんでした。現代では、ネットやSNSに体系化されていない成功体験や情報があふれていて、どう取捨選択するか、どの情報を信じるかは非常に難しい判断かと思います。そこを「必要な知識を必要なだけ」、体系化してお伝えできれば、あとはアスリートの皆様個々人の能力で動いていけると思います。そういった観点からも、教育プログラムを作る必要性を感じました。

河島:

「MANAGEMENT-K CAREER」では、そういった基礎的な知識をインストールしていくというところですね。

永松:

はい、おっしゃる通りです。実は私も、スポーツビジネスに参入する前に、専門スクールで学んだことがあります。その道の第一線の方による、体系化されたお話は、本当に面白かったです。私が、受講生としてスクールを選ぶ際に重視したのは、「地に足がついている」「実際に手を動かす現場を学べる」という点です。というのも、多くのスクールで展開される話は、目立つ事例や規模の大きいケーススタディ、海外の事例等で、どうしても「自分事」として受け取るには遠すぎるように感じます。もちろん、そういったお話も非常に面白いのですが、そこをもう少しブレイクダウンして、「明日私は何をすれば良いのか?」「結局何を身につければ良いのか?」というところを示すのが必要だなと考えました。そこで、「必要な知識を必要なだけ」というのをコンセプトに置いています。

河島:

具体的には、どのようなプログラムになりますか?

永松:

今後、自分でビジネスを作る方、会社組織に所属する方、どちらであっても対応できる内容になっています。前提となる「キャリア」の考え方、自己分析、社会構造、ビジネスモデル、そして実際に「売上を立てる」「セールスする」というところまで、盛り込んでいます。またプログラムの最後には、「お金」や「資産運用」についてもプログラムに入れており、それら全てを3か月で学びきるという内容です。プログラム内の大部分は、アスリートかどうかは関係なく、汎用的に必要とされる内容になっています。

キャリアと社会構造の両方を学び、社会ではどのような人材が求められているのか、それに対してどのようにキャリアを作っていくか、それは自分でビジネスを作るのか、それとも会社に所属するのか、そしてどのような流れでお金が生まれて、どのように自分の手元にはいってくるのかといったことを、知っておく必要があります。

河島:

素晴らしいですね。本来こういった知識は、競技と並行しながら学ぶのが理想であるとは思いますが、なかなか業界としてできてないというところでしょうか。

永松:

そうですね。もちろんそういうところの感度が高い方は、すでに自ら色々と取り組んでいらっしゃると思います。ただ一方で、自分を顧みても、私が会社員だった時代に、「会社を作って、事業を作って、売上立てて」というところを自分で学んでいたかというと、はっきり言って全くできていなかったと思います。現状の自分のライフスタイルを超えて、次のステージへ準備するというのは、やはりなかなか難しいものです。そこで、そういう準備や対策を、体系的にできるところがあったらいいなというのは、サービス想起のきっかけにもなっています。

河島:

現在、セカンドキャリアの課題に取り組んでいる方を多く見かけますが、多くは就活・転職サービスのような領域をセカンドキャリア支援と謳っていると思います。今回に関しては、「教育プログラム」ありきで、アスリートが費用負担するというようなイメージでよろしいですか?

永松:

はい、基本的に我々は人材紹介という領域は手がけません。就活・転職・起業といった領域の「手前」のところまでに、必要な知識や武器を揃えていただく当事を目的としています。とはいえ、多様なリクエストには応じたいと考えておりますので、実際の就職マッチング等に関しては、信頼できる企業様と提携をさせて頂いております。

河島:

ありがとうございます。要するに幅広くチャンスや可能性を見出せるような形になっているのですね。

永松:

はい、おっしゃるとおりです。その先は個人次第だと思っておりまして、基礎的な知識さえあれば、後は個人能力が発揮されるべきだと考えています。我々が、いたずらにキャリアの意思決定まで導くようなことは、全く必要ないと思っています。

河島:

これから少子高齢化が進んで、どこも特に若い人材が不足している話はよく聞きます。そういういみでは、今の若い方々はチャンスが多いのではないかなという風には思っていますが、いかがでしょうか?

永松:

おっしゃる通りで、我々の講座を受けた方々が、多様な所で活躍していけば、より多くの方々が多様なキャリアを選択できるようになると思います。そのうちに、スポーツの中でも、我々が想像できないような新たなビジネスモデルやキャリアが生まれてくるのではないかと期待しています。結果として、人材不足への対応とか、多様な生き方へのきっかけづくりができればいいかなと思っております。

河島:

アスリート個人や競技によっても違うとは思いますが、全体的に見てアスリート人材の強みは何だと思いますか?

永松:

間違いなく一つ共通しているのは、初めから「自信めいたもの」が備わっていることです。通常、よくあるキャリアとして学生から就職したり、一般的な社会人生活を送っている場合、人から褒められたり、表彰されたりする事はあまり無いと思います。一方で、アスリートは最初からその経験があります。場合によっては、それが変なプライドにつながるケースもあるとは思いますが、いわゆる「勝った経験がある人」は採用する側からすると、非常にバリューになると思います。

河島:

「MANAGEMENT-K CAREER」を受講された方々に、期待することはありますか?

永松:

そうですね、色々な選択肢にトライして頂きたいです。現代では、お金の稼ぎ方は多岐に渡っていますので、「セカンドキャリア」だからといって、必ずしも「会社員になる」のが正解ではありません。会社も多様な会社がありますし、自分で事業をする人もいますし、公務員を選択する方もいらっしゃるかもしれません。幅広い選択肢がある中で、自分に合った選択して頂ければ良いなと思います。プログラムでの学びを通して、多様なキャリアを選択する人が出てくれば良いなと思っています。

河島:

ありがとうございます。現在は受講生を募集中という事ですね?

永松:

はい。アスリートの方、コーチの方、現役の方、引退された方、その他異業種の方でも気にせず参加頂ければ、大変幸いです。

河島:

この事業における目標や方向性等のビジョンはありますか?

永松:

ここで学んで頂いた方を中心として、一大コミュニティを作りたいと考えています。私自身も、スポーツビジネス業界では、かなり変わったキャリアの人間だと思っておりますので、私を含めて、多様なキャリアを持った方が集まる独自性のあるコミュニティになっていけば良いと思います。


(聞き手:(株)RIGHT STUFF 代表取締役 河島徳基)


インタビュー中にもあったが、セカンドキャリア支援とは「就職先の斡旋」だけではない。アスリートがこの先何をしたいのか、自分の強みは何なのか、世の中はどうなっているのか、この辺りをしっかり整理した上でアスリート自ら次を選択する能力を身に着ける必要がある。本来これはアスリートである時からやっておかなければならない事なのだが、日本のスポーツ界では残念ながらまだまだ現役中は「競技だけに集中する」という考え方が残っている。今回取り上げた「MANAGEMENT-K CAREER」の今後に注目したい。



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