MLSが起こすチケット革命! 第三者による販売を認め、再販も可能に
2016年07月31日 コラム チーム/リーグ経営 Written by 川内 イオ
アメリカのメジャーリーグ・サッカー(MLS)が、世界の全てのスポーツ業界に先駆けて、革新的な取り組みを始めた。
7月27日、リーグがチケット販売大手のシート・ギーク社(SeatGeek)と組んで、全てのクラブが参加するオープンなチケット売買プラットフォームを構築し、ファンがより簡単にチケットを購入できるように、第三者のチケット販売を認めると発表したのだ。
来年から開発がスタートするこのプラットフォームを導入すると、クラブが任意で選んだサイトやモバイルアプリがパートナーとして、チケットを販売できるようになる。例えば、シアトル・サウンダーズが個人の部屋や家を貸し借りするサービスのエアビーアンドビー(Airbnb)と組んで、シアトル近郊の部屋を探しているユーザーに、チケットを販売するということが可能になるのだ。あるいは、ニューヨーク・レッドブルズの公式ファンクラブが、ファンクラブのサイトで試合のチケットを販売することもできる。
パートナーシップの条件はまだ開示されていないが、パートナーにも何らかのメリットがもたらされるだろう。
さらに革新的なのは、ファンがいつでも、安全に、複数のサイトで自分のチケットを転売できるように再販のプラットフォームも構築されること。これまでは個人が自分のチケットをネット上で売ろうとする場合、当然、個別対応せざるを得なかったが、新しいシステムを通すことで、複数サイトへの情報の掲載、売れた後の情報削除まで一括でできる。
MLSの公式ホームページでは、担当者が「スポーツ業界で最高のチケッティング体験を提供する」とコメントしているが、まさにこれまでにない発想である。
第三者のサイトでチケットを販売するということは、チケットの情報を目にする人が格段に増えることを意味し、潜在的なファンの掘り起こしにつながる。また、個人レベルで利用できる再販システムは、ライトなファン層とスタジアムの距離を縮めるはずだ。
そして、チケット販売を通して得られる購入者の情報も大きな価値を持つ。
MLSの人気はうなぎのぼりで、1試合当たりの平均観客数は2万人を突破しているが、この取り組みによって、確実に観客数は増加するに違いない。それはイコール、各クラブの収入アップになるだけでなく、リーグ全体のブランド価値を高めることにもつながる。
アメリカの4大スポーツ(野球、バスケットボール、アイスホッケー、アメリカンフットボール)の後を追うMLSの、野心的な挑戦。
世界中のスポーツ業界が、その成果に注目していることだろう。
【了】
川内イオ●文 text by Io Kawauchi
1979年生まれ。大学卒業後の2002年、 新卒で広告代理店に就職するも9ヶ月で退職し、2003年よりフリーライターとして活動開始。2006年にバルセロナに移住し、主にスペインサッカーを取材。2010年に帰国後、デジタルサッカー誌、ビジネス誌の編集部を経て現在フリーランスの構成作家、エディター&ライター&イベントコーディネーター。 ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンターとして活動している。
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